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アレルギー膠原病内科 

78歳男性、関節リウマチ    日本医科大学 白井悠一郎、桑名正隆

概要

1ヶ月前より両膝関節の疼痛が出現。2週間前に近医整形外科受診し、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方されたが症状改善しなかった。次第に歩行も困難となり、同院再診。37℃台の発熱があり、ADL低下著しく、同院に緊急入院となった。当初は偽痛風や感染性関節炎の可能性も考えられたが、入院後、手関節の腫脹・疼痛も出現。血液検査で炎症反応が上昇し、リウマトイド因子が陽性であった。関節リウマチ(RA)などリウマチ性疾患が疑われ、専門施設である当院リウマチ膠原病内科に転院となった。  

初診時現症

<一般身体所見>
胸部聴診異常なし、皮疹なし
腫脹関節あり(両手第2指・3指中手指節間関節、両手関節、両膝関節、右足関節)
圧痛関節あり(両手関節、右肩関節、左膝関節)

主な検査所見など

<血液検査>
血沈亢進、CRP上昇、抗核抗体陰性、リウマトイド因子陽性、抗CCP抗体陽性、肝機能・腎機能異常なし
<関節穿刺検査>
関節液はやや混濁、結晶なし、一般細菌培養陰性、抗酸菌塗抹陰性
<画像検査>
X線:手指・手関節や足趾には骨破壊像なし、両膝関節の関節裂隙狭小化あり
胸部CT:肺野に明らかな炎症性変化・間質性変化なし

診断と鑑別診断

多関節炎が1ヶ月以上持続し、最も考えるべきはRAである。米国/ヨーロッパリウマチ学会(2010)の分類基準に従うと、まず他疾患の可能性を除外することが診断の第一歩である。主なものとしては感染症、結晶誘発性関節炎が上げられる。本例はウイルス感染としては症状が長期化している。また、細菌による化膿性関節炎や偽痛風は通常単関節炎であり、関節穿刺検査からも否定的である。さらに、RA以外の他のリウマチ性疾患を示す経過・症状・検査所見はみられていない。手指の小関節を含め左右対称に多関節炎を認め、リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性であることから、RAと診断した。

治療方針

高齢であるが他に臓器合併症がなく、RAの基本的な治療薬であるメトトレキサートを開始した。効果発現に約1ヶ月かかる一方で、高齢発症RA患者では短期間に活動性が高い状態に進行し、ADLの低下を招くことがしばしばあり、早期に症状を改善させることが求められる。本例では最初の1ヶ月、即効性が高いステロイドを少量併用した。

治療経過の総括と解説

【RAの特徴的な症状と検査所見】
全身の関節の炎症を主な特徴とし、炎症により関節破壊・変形が進行してしまう疾患である。その結果、ADL低下はもとより、手術、寝たきりといった経過も辿ることがある。
血液検査ではリウマチ因子陽性や抗CCP抗体陽性が診断の参考になり、炎症反応上昇が病状の程度(疾患活動性)を反映する。画像上、進行に伴い軟骨破壊を反映する関節裂隙の狭小化、骨破壊像がX線で見られるが、最近は滑膜炎の診断にエコーが繁用される。
【標準的な治療】
 まず標準的な抗リウマチ薬であるメトトレキサートを使用し、腫れている関節がなく、関節破壊の進行が抑制された状態(寛解)を目指す。達成できなければ3~6ヶ月ごとに治療内容を見直し、他の経口抗リウマチ薬の追加や生物学的製剤の導入を行う。
【診療における高齢者特有の対処】
①高齢者におけるRAの特徴
高齢(60歳以上)発症では、1)手足の小関節炎よりも肩・膝・足など大関節炎が多い、2)急性発症し、高疾患活動性に移行しやすい、3)リウマトイド因子、抗CCP抗体陰性例が多く、診断が容易でない場合がある、などの特徴がある。
②高齢者におけるRA治療の注意点
1)腎機能・肝機能が低下していることが多く、治療薬の調節が必要、2)一人で複数の疾患・合併症を持ち、多剤を服用するため、薬物相互作用への注意や内服管理が必要、3)免疫能が低下し、潜在的な感染症を持っていることがあり、感染症リスクに注意が必要、といった点に配慮すべきである。
【治療経過】
転院時、本例のRAとしての疾患活動性は非常に高く、歩行は困難で、ほとんど寝たきりであった。抗リウマチ治療としてのメトトレキサートともにADLの早期回復を短期的治療目標としてプレドニゾロン10mg/日を併用した。将来の関節破壊の進行が容易に予測されるため、禁忌がないのを確認の上、メトトレキサートに追加して生物学的製剤を導入した。その後は、通院治療しながら自立した生活を送ることができている。

参考文献